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尾崎国子のヒンデローペン

Kuniko Ozaki’s Hindeloopen

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尾崎国子ヒンデローペンエッセイNo4

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ゆっくり時間の流れる国

1992 年に赴任したオランダの様子を少しお伝えし、ヒンデローペンがこのようなオランダで育まれたことを感じていただければと思います。

オランダは日本の九州位の広さで、60%が農地、牧草地で、国土の4分の一が海よりも低く13世紀以来の干拓で生み出された国です。海と陸との境界には大堤防が造られ、人々を海から守ってきました。

「世界は神が造り、オランダはオランダ人が造った。」の言葉どうり、この大堤防に立つとき、オランダ人の底知れない力を感じます。

私の住んでいたアイアントホーヘン市はオランダ第5番目の大きな市で、フィリップスの会社で有名です。オランダの南の下のほうで、ドイツとベルギーの国境の三角地点に位置しています。どこまでもどこまでもまっすぐに植えられた街路樹、大空にのびのびと梢を広げ、堂々と聳え立つ様は威風堂々、荘厳さを感じます。

私の住む11階のマンションからの景色はどこまでも平らで、どこを向いても街路樹が規則正しく並んでいます。何しろオランダの最高海抜が32メートルですので、海からの風は年間を通じて強く吹いてます。
オランダ人の平均身長が170センチ、なんと若者男子の7%は193センチとのこと、「上空の天気はどうですか」と随分お洒落な日常の挨拶があるくらいです。
格好良い長い足のジーンズで、颯爽と自転車に乗っている姿は、短足コンプレックスの私には羨ましい限りです。

オランダにはEUを境に、多くの人々は自由に国境を行き来できるようになり、駅などには色々なお国の人々が、それぞれのグループごとにたむろし、少し異様な雰囲気をかもし出しています。冷戦構造が崩れるとともに、多くの不法流入者がオランダの経済や社会問題に大きな影響を与えています。実際にお友達の話によると、老後の社会保障や福祉のお金がその人たちに流れてします恐れが出てきつつあるとのことです。

度重なる諸外国の支配を受けた歴史的背景を持つオランダは外国の援助を積極的にしている国で、外国人への特別視がまったく無い国ですが、最近は難民を締め出す法律や保守派の市長が当選をしているとのことです。
でも、日常の生活では、人々は暖かく、おしゃべり大好きで、夕方の買い物時は主婦のおしゃべり天国です。そして一度顔見知りになると、一段と親切になります。

夜8時のコーヒータイムに招待を受けると、夜中の一時ごろまで、ぺちゃくちゃです。
バスの運転手さんも気楽に「ヤー」と挨拶します。気さくで、地味、見栄や虚飾はまったく無いので、ゆったりとしています。

環境問題に人々は熱心で、毛皮のコートは誰も着ていません。地味な防寒コートで寒風の中、雨が降っても動じることなく、黙々と自転車をこいでいます。各駅に貸し自転車があり、自転車専用の車両もあり、人々の生活に自転車が大きなウエイトを占めています。道が平らで、車道、歩道、自転車道と分かれているので、安心して乗れます。

有名なダッチアカント、割り勘、ハムやチーズのスライスの薄いこと、(向こう側が透き通って見えるぐらい)個人的には質素ですが、社会福祉や自然保護、難民問題、等の寄付には協力を惜しみません。オランダ人の心の広さと言うのでしょうか、世界的な規模を持った国民だと思います。

どこまでも続く草原と規則正しく植えられた森の木々、並木道。自転車道路標識が、100キロ先の方向を示しています。運河と風車、チューリップの国オランダ。太陽が一日の終わりを告げるころ、自転車の群れは帰路を急ぎ、街角のカフェでは買い物帰りのご婦人たちが、熱いコーヒーでおしゃべりに花を咲かせています。本当にゆっくりとした時が流れる国、オランダです。