尾崎国子ヒンデローペンオフィシャルサイト

尾崎国子のヒンデローペン

Kuniko Ozaki’s Hindeloopen

トップページ > 尾崎国子ヒンデローペンエッセイNo6

尾崎国子ヒンデローペンエッセイNo6

No1No2No3No4No5
|No6|No7No8No9No10

ウインタータイムのオランダ

冬時間の9月27日を迎えるといよいよ冬時間、時計の針を一時間もどします。日一日と昼の時間が短くなり、暗く重く鉛色の空になる冬を迎えますが、つかの間の秋は一度に訪れます。北風を我が物顔に吹きまくる冬将軍がいよいよ上陸です。

木々の紅葉は10月をピークに一気に晩秋を迎え、11月に入ると北風と冷たい雨が木々の紅葉を惜しげもなく落として、やがて冬を迎えます。木々の赤い実は寒風にさらされ、我が家からの眺めの紅葉の絨毯も一夜のうちに散ってしまいます。
晩秋の景色を求めて今日も自転車でお出かけです。

車で10分も行くと見渡す限り、地平線のかなたまで草原がつづき、放牧された牛や羊が一日中休み無く黙々と草を食べています。考えてみれば、彼らは食料の上で毎日生活をしているようなものです。( 私もなりたい!)

行儀良く並ぶ大木の街路樹が大きな枝で道を包み込むようにトンネルを作り、配色良く秋に染まって、その下を風を切りながら自転車をこぐ私の心はこの上ない幸一杯、心まで、錦の秋に染まっています。そして、やっと木立ちが切れるとそこは運河が運んだ大きな池やゆったりとした水辺が広がります。冬のひざ日を浴びて、色々な種類の水鳥が羽を休め、戯れています。近寄ると一斉に「パンをください」とばかり、私のそばによってきます。

パンの端をいつも貯めておいて、もってくるのが日課のようになり、私の姿を見ると、遠くのほうからも、まるで運河を滑走路のように滑りながらやってくるアヒルもいます。私の目当てはアヒルの白ちゃん。一羽だけ白いのですが、目がいつもピット合ってしまい、それからは白ちゃんは私の友だちです。

森の中に少し入ると栗のいががかわいらしい実をつけて、転がっており、すぐ袋一杯に収穫です。森の小道を少し入ると名の知れない茸がそこにもここにも、あるわ、あるわ、!もう興奮!しかし冷静に食べられないものはとってはだめと、カメラに茸を収めて、又小道に入る。又もそこはおとぎの国に迷い込んでしまった、白雪姫???じゃなく、ハッスルおばさん、赤に白の水玉模様のきのこを見つけたときは、「ヘンデルとグレーテルもこのように森の入り込んだのかしら」と、年甲斐も無く幼い日々の童話の世界に入り込んだ錯覚をしばし楽しみながらの森の散策でした。

やがて北風がほほに冷たく、太陽が一日の終わりを告げるほんの一時頃、街々は人々の帰路を急ぐ自転車の群れ、それぞれの生活で活気付きます。

ワンちゃんは夕方の散歩で公園の芝生を走り回り、子供たちはサッカーに興じています。そのそばで恋人が愛を語り、そのそばでは夕食を探しにウサギの親子が藪の中から顔を出します。愛くるしい子ウサギの姿に一日の疲れもスーッと取れるよう。なんてのどかな一日の終わりでしょうか。夕食の支度を終えた人々は街のカフェでコーヒーで今日のおしゃべりを楽しんでいます。テーブルのピンクのクロスが夕日に映え、テーブルの花が人々のコーヒータイムの味をさらに美味しくしてくれます。買い物籠を足の下に置き、ワンちゃんはそのそばでご主人様のおしゃべりを我慢強く付き合っています。冬を迎えるオランダの景色です。